今回applemintさんに縁あって寄稿させていただくことになりましたLinkBiz台湾の坂端と申します。私は2003年に台湾に移り住み、飲食店や日本語教師などの職を経て、今は台湾進出のサポートを主な生業としております。
今回、applemintさんより、「台湾進出する際に失敗するパターンを共有してください」とリクエストいただきました。すでに10年以上、台湾進出を支援する仕事をしてきましたが、残念ながら「これをすれば必ず成功する」といった明確なメソッドはまだ見つかっていません。
ですが、過去台湾進出支援した際の経験だけでなく、自分が台湾で事業を経営していくなかでも苦労した点は多くありますので、今回はその中から4つを紹介させていただきます。それは、
①営業開拓を台湾人に任せてしまう
②就業規則や雇用契約を曖昧にしたままで人材採用をスタートしてしまう
③台湾市場を明確に客観的に把握せずに、主観的なイメージで進出してしまう
④何でも自分でやろうとしてしまう
の四つになります。もちろんこの4つのいずれの条件かでもトラブルを避ける手段はありますが、その手段を知らないままですと苦労する可能性が高まります。それぞれ見ていきましょう。
Contents
その1. 営業開拓を台湾人に任せてしまうパターン
商品やビジネスモデルを台湾人の現地責任者に共有し、あとは日本からの遠隔操作でマネジメントするというこの形です。この形は、誰しもが考えることではないでしょうか?成功すればあまり自分に負荷をかけずに済む形ですが、実際には理想の売り上げを作るに苦労するパターンの一つです。
そもそも遠隔操作で台湾の現地スタッフをマネジメントしたり、モチベートしたりするのは非常に難易度が高く苦労します。日本で毎日スタッフと顔を合わせていてもスタッフマネジメントは難しいことなので、それを遠隔でしかも異国に対して行うのですから当然といえば当然です。
類似のパターンで商品を台湾業者に代理営業してもらうというパターンも難易度が高く、成果がでるまでに時間がかかることが多いです。台湾に進出するのであれば、その事業にコミットできる人が、現地に住み、腰を据えて営業開拓していく方が成果を手にする近道のように思います。
その2. 就業規則や雇用契約を曖昧にしたままで人材採用をスタートしてしまう
これは意外とありがちのように思います。台湾進出後、弊社にご相談いただく案件の中でも割合が多いのはスタッフとのトラブルです。この類のトラブルは、就業規則と雇用契約書をしっかりつくることでほぼ予防することができます。
しかし、台湾でのスタートアップ時期は忙しく、なかなかそこまで手が回りません。結果として日本で慣れ親しんだスタイルで労務を処理するようなことも多く見られます。台湾の方は自分の給与や福利条件などに非常に敏感です。
日本と台湾では労働基準法が違うだけでなく、スタッフの会社に対するロイヤリティの程度も全く異なります。例えば台湾で有給消化率は非常に高く100%に近くなります。当然、スタッフは自分の有給がいつ取得できるのか、あとどれくらい残っているのかなど確認してきます。
当然雇用側は有給に関するルールを理解している必要があります。不適切に処理するとスタッフとすれ違いが起きます。残業計算や休日出勤の場合のルールも同様です。ここで信頼関係が損なわれると、最悪スタッフの離反などにつながります。
スタッフとのトラブルは事業の成長スピードに影響を与えますので、しっかりと予防しておくことをお勧めします。
その3. 台湾市場を明確に客観的に把握せずに、主観的なイメージで進出してしまうパターン
極端な例を挙げると、台湾に現地調査にきて、台湾人が経営する日式のラーメン屋さんをみて、その味やその接客レベルを低いと感じ、これなら自分でラーメン屋をやってもいけると思い台湾進出にチャレンジするようなパターンです。
日式の店が流行っているのは背景があります。その背景を知らずに主観的な判断で、日本料理を持ってきても成功するとは限りません。台湾市場のニーズと戦略的に勝負するポイントを十分に吟味し進出することで成功率が高まるように思います。
同じように台湾が好きだからということで台湾に進出される方いらっしゃいますが、これもうまくいかないことが多いように思います。
その4. 何でも自分でやろうとしてしまうパターン
台湾での設立から人材採用、労務、経理業務と、日本では自分でできていることを自分でやろうとうすると苦労することが多いです。言語だけでなく法も文化も商習慣も異なる異国でこういったことを自分で行うと、想像以上に時間がかかり、本来やるべき売り上げを上げるために使う時間を圧迫していきます。
台湾に長く住んでいて、中国語が堪能で、台湾の商習慣に精通しているという方でない限り、売り上げに直接かかわるようなこと以外は、専門家に任せるほうが良いように思います。
ポイントは、全て任せっきりにはならず、長期的にはいずれ自分や自社スタッフができるようになることを目指して、専門家をハンドリングすることだと思います。将来的には外に委託している業務を内省化すること目的に、自分やスタッフの能力や経験を増やしていけるような関係性を専門家と築くことがおすすめです。
いかがでしたでしょうか。
人に任せて失敗、スタッフとの関係をこじらして離反される、勝手な思い込みで事業を開始して失敗する、何でも自分でしようとして時間が足りなくなる、と実は①も②も③も④もすべて自分の失敗経験でもあるので、公開するのは非常に恥ずかしいのですが、こういったことを経験したからこそ今があるとも考えることができます。
是非皆さんには以上をご参考いただき、これから同じ轍を踏まないようにしてもらいたいと思います。
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