こんにちは!applemintの津山です。皆さんは台湾で急速に高齢化が進んでいることをご存じですか?
台湾では2025年に65歳以上が人口の20%以上になる超高齢化社会になると言われています。そこで今回は注目の台湾の介護事情についてお伝えします。
日本は1970年にすでに高齢化社会に突入し、2007年には超高齢化社会に入りました。つまり介護に関してすでに多くの経験を持っています。ですが台湾はどうでしょうか?
実は台湾が高齢化社会に入ったのが1993年、その後、急速に高齢化が進んだため介護サービスが市場のニーズに追いついてないのが現状です。つまり今、台湾の介護現場は非常に厳しい状況にあります。
そこで今回は台湾暮らしの筆者が、現地で見てきた台湾の超高齢化の背景と、台湾介護の現状、そして台湾介護業界が抱える課題を、まとめてお伝えします!
目前に迫る超高齢化社会に向けて、台湾で「介護」というキーワードは今非常に注目が高まっています。日本で介護に携わる方、今後台湾の介護業界に進出したいと考える方は、ぜひチェックしてください!
Contents
台湾の高齢化の現状と理由
冒頭で説明しましたが、台湾の高齢化は急速に進んでいます。内政部のデータによると、台湾人の平均寿命は2022年に79.84歳となり、65歳以上の人口は17.56%に到達しました。
現在の見立てでは、台湾では2025年にも高齢者割合が20%を超える超高齢社会に突入し、2040年には、若者二人で一人の高齢者を支えることになる、と言われています。
台湾で急速に高齢化が進む理由は大きく分けて二つあります。
1つ目の理由は、台湾の保険制度により安く病院に通えること、そして二つ目が少子化が進んだことです。
台湾人は99%が国民保険に加入しており、病院では非常に安い値段で治療が受けられるので、台湾人は不調があればすぐ病院に行きます。待合室も常に高齢者でいっぱいです。
最近手術を受けた台湾人から聞いた話では、腹腔鏡手術などの先進医療もちゃんと保険適用らしいです。
台湾医療の現状を詳しく知りたい方は、applemint labの方で代表の佐藤が書いたブログがあるのでご紹介しておきます。
2つ目の理由が「少子化」です。台湾の2023年の出生率は1.09人で、世界ワースト1になるなど事態は深刻です。少子化の理由はこちらも参考にしてください。
知っておきたい!急速に進む台湾介護の現状
台湾の介護はどのように行われているのか?
台湾政府の調査によると、2023年5月の時点で、長期介護サービスの対象者(日本でいうと要介護者とほぼ同等の定義)は84.2万人を超えています。
そのうち76%の方が、デイケアや訪問介護、施設入所などの介護サービス(長照2.0服務)を利用しています。
日本の場合は、要介護者とされる約490万人に対し、8〜9割が介護サービスを利用しているので、日本と比較すると利用率が低いのが現状です。
介護サービスの代わり?台湾ならではの外国人労働者活用
台湾で市井の介護サービスを利用してない人はどうしているかというと、外国人の介護人材を雇い、住み込みで介護をしてもらいます。
2023年、台湾には介護のための外国人労働者が23万人おり、そのうち、医療機関に勤めず、家庭につきっきりで介護する人が、21万人ほどいると推定されています。国籍ではインドネシアが約75%と圧倒的に多いです。
外国人介護者を雇う場合、報酬は月に12万円以上必要です(2024年2月のレートで換算)。1ヶ月の給与平均が20万円程度の台湾人にとって、決して安い額ではありません。
しかし介護のために外国人を雇用する人は今後も増えるとみられており、2026年には27万人の需要に対し5万人も不足すると推定されています。
施設入所の割合は日本の半分程度、その理由は?
調査によると、2023年の台湾の要長期介護者のうち、入所型介護施設の利用者は14%程度です。
日本では要介護者のうち、老人ホームや特養等を利用する割合は20%程度で、台湾は日本と比べるとそこまで高くありません。それには2つの理由があります。
その1. 元々入所型介護施設が少なく、床数が足りなかった
その2. 入居費用の負担が大きかった
これに対して政府も黙ってはいません。施設不足に関しては、政府が補助を出し、2024年までに台湾全土で50ヶ所の入所型介護施設を建設する予定があります。
また施設入居に対する補助も強化し、2021年からは、90日以上入居した場合は、家庭収入に応じ最大約27万円までの一括補助が出るようになりました。
さらに2023年からは、180日以上入所した場合でかつ政府の要件を満たす場合、最大50万円程度の補助が出るようになりました。
台湾は現在急速に少子化が進んでいることもあり、環境が整ったことで自宅介護や外国人労働者による介護から、入所型介護施設を選ぶ人が今後増えてくると考えられます。
とはいえ、家族の繋がりが強い台湾では、施設に入れることは親不孝という風潮も根強いようです…
台湾の介護市場規模と注目のサービス
台湾の介護サービスの市場規模ですが、コンサル会社の調査では2025年には2,000億台湾ドル(約8,000億円)を超える見通しです。
特にニーズが高まる分野として、介護業界のDXが注目されています。具体的には、医療・介護用品を販売するECサイトや、介護家庭と病院間のオンライン診察ができるシステムなどです。
例えば、医療・介護向けECシステムやSaaSを提供する台湾企業「諾亞克科技(U-ARK Tech)」はここ5年で売上を30倍に伸ばしています。
台湾の衛生署によると、「長期介護施設」以外にも、現在台湾で広がりつつある「デイケア、高齢者向け配膳サービス、交通サービス」等の需要も高まる見通しです。
以下のグラフでも、台湾のデイケアサービス拠点が、7年間で3.7倍まで成長しています(下図・左側)。
台湾は現在、日本と同じ介護設備がかなり揃ってきているといえます。そこで、日本を参考にした介護サービスが次々に登場してくると思われます。
台湾の介護業界が抱える3つの課題と将来
最後に、急速にニーズが高まる台湾の介護業界の3つの課題をお伝えします。それはお金・人材・サービスの差別化です。
介護ビジネスの資金調達は、日本と同様に、政府の補助金頼みになる傾向があります。しかし、政府の補助金を受けるためのハードルが高く、民間企業が積極的に参入したがらないのです。
また人員不足も深刻です。台湾の介護関連人員は、政府の支援もあり、2.5万人⇨9万人以上まで増えました。
しかし一方で、サービス利用者は10万人⇨40万人とさらに早いペースで増加しています。この状態が続くと、人手不足は今後さらに深刻になるでしょう。
最後は、サービスの差別化です。介護ビジネスは政府からの規制がある上、収益を補助金に頼る傾向があり、革新的なサービスが生まれにくい分野です。
この状況を改善するため、台湾政府は、高校に介護科を創設したり、介護関連企業にマルチメディアの活用を呼びかけています。
実際に介護用オムツなどを検索すると、ちゃんとGoogle広告が出てきますよ!
現在、台湾では、上記の課題を解決するために、日本の介護サービスが辿った歴史や直面した課題、そして解決策に、非常に注目が集まっています。
つまり、皆さんが、日本で何かしらの介護問題を解決するサービスを提供していれば、将来的に台湾の介護業界でも導入されるチャンスがあると考えます!
いかがでしたか?今回のブログが、台湾の介護業界に興味がある皆さんのお役に立てば幸いです!
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