こんにちは、台湾でウェブマーケティングのサービスを提供する applemint 代表の佐藤 (@slamdunk772) です。
今日は日本市場に進出した台湾企業が、日本に進出したのはいいけど、結局”誰”の”どんな”問題を解決したいか明確でないため、苦戦しているというお話をしたいと思います。
今後台湾に進出する日系企業や、現在台湾で苦戦している日系企業の参考になるのではないかと思っています。
結論から言うと、定量的調査 (データを基にした調査) と定性的調査 (インタビューなどの調査) の二つをきちんとしたらどうですか?というお話です。まずはこのブログを書く事になった背景から少しお話をします。
最近僕の周りでは日本に進出したい!或いは進出したけどうまくいっていないという台湾企業の話をよく聞きます。彼らの話をよく聞くと、「日本人と日本市場は独特」、「日本市場は本当に難しい」「日本でどうしたらいいかわからない」という声が聞こえます。正直僕自身は日本で起業したことはありません。
そのため僕が彼らにアドバイスをしても少し空虚に聞こえるかもしれません。しかし僕には日本にオフィスを構える顧客も複数いて、もしも今この瞬間に日本で起業をしても、すぐに売上は出来ます。なので彼らよりは幾分日本進出がうまくいくと思います。
ただ、このブログで僕がしたいのは僕の自慢話ではなく、僕はなぜ日本で売上が出来るかというお話です。その理由は「具体的なターゲティング」と「対話」だと思っています。
そして台湾の企業は具体的なターゲティングができていないが故に「対話」ができず、日本でうまくいってないと思います。これは台湾に進出してうまく行っていない日系企業も同じことが言えると思っています。ではなぜ具体的なターゲティングができないのか?
その理由は冒頭でもお話ししたように定量的調査と定性的調査の二つが欠けているからだと僕は思っています。どちらか一方ではダメなんです。
あなたは海外のどんな問題を解決しようとしていますか?
例えば日本から台湾に進出して失敗している企業の多くは、「あなたは誰のどんな具体的な問題を解決しようとしていますか?」という質問に答えられません。BtoBの企業であれば、1社でも具体的な名前が出ればいいと思っています。BtoC の企業であれば1人でも具体的な消費者の名前とその人がどんな人でどんな問題があるか描写出来ればいいと思っています。
例えば僕なら上記の質問に対して、「僕らは台湾にある日系企業〇〇社のデジタルマーケティングを支援しています。〇〇社の総経理〇〇氏は、当時台湾で信頼できる広告代理店がおらず、その理由は台湾にある日系広告代理店が透明性や品質を欠いていたためです。そこで僕らは透明性と日本レベルの品質を持って顧客にアプローチし、顧客獲得に成功しました」のように、とても具体的にどんな顧客がどんな問題を抱えていて、それに対して僕らが何をしたか言えます。
「1社だけ具体的に言えても大した売上にはならない」と思うかもしれませんが、千里の道も一歩からです。逆に言えば 1社或いは1人も具体的にターゲットを描写できない企業は10人も100人も難しいと僕は思っています。
実際、以前僕らが日本進出のお手伝いをした台湾の企業さんは具体的に日本のどの企業のどんな問題点を解決したいか明確ではありませんでした。僕らが彼らにターゲットを聞いても、返ってきた答えは「教育関係者」、「BtoB」、といったとてもふわふわした回答でした。
「教育関係者」と言っても学校の先生なのか、ベネッセのような出版社なのか、学習塾なのか分からなければ訴求が曖昧になります。僕らは教育関係者や BtoBのターゲットに接触して頑張りましたが、結果的にあまり効果は出ませんでした。
ちなみにターゲティングのコツは問題を抱えている顧客に対して自分達が手伝う必要性及び強みが活かせるか否かです。例えば僕らは台湾にいる日系企業や、台湾にいて日本に進出したいと考えている台湾企業をターゲティングしています。
その理由は彼らの悩みに対して僕らの”日本人/日系企業”としての強みが活かせるからです。結果的に、僕らはこのターゲティングを適切にしたため、今も生き残っていると思います。
では僕らはどのようにターゲットを決めたか?僕らは「対話」を通じてターゲット像を明確にし、解決策を創出しました。デジタル広告やデータといった定量的調査だけでターゲットを明確にするのは不十分だと僕は考えます。
現場に答えはある
「対話」とは要するに、自分がターゲットと思う人と直接お話をするという事です。この対話を無視して、勝手に存在しないターゲットの悩みを想像する台湾企業や日系企業が後を絶ちません。
随分と偉そうにすみません(苦笑)
ここで対話の重要性について僕の母親が住む岩手県盛岡市を例に少しお話をさせてください。僕の母親が住む岩手県盛岡市は現在人口がどんどん減っていて、高齢化が進んでいます。高齢者の方はデジタルな事は全くと言っていいほどできません。
ある時僕は母親から、母の友人の眼科の方が出席する会議のポスターのデザインを手伝って欲しいと言われました。参考までに去年のデザインを見ると、それはひどいものでした。
不安になった僕は次にその母の友人の眼科のウェブサイトを見ました。そしたらそのウェブサイトのデザインは10年ぐらい更新されていないようなものでした。
では、ここで質問です。僕の会社ではウェブサイトの制作をしているのですが、僕はこの時母親の友人にウェブサイトを営業しに行くべきでしょうか?多くの方は「Yes」と答えるでしょう。
しかし僕の答えは「状況次第」です。なぜなら僕は彼女がきれいなウェブサイトを必要としていない事を知っているからです。彼女には Google my business も必要ありません。盛岡市のような高齢化が進んだ都市ではそもそも高齢者の方は綺麗なウェブサイトや Google のレビューを基に眼科には行きません。
また、この眼科はご近所の既存顧客だけで十分商売が成り立ちますし、母の友人はそもそもこれ以上お客さんを増やしたくないとさえ思っています。僕がこの事を理解しているのは、僕がコロナ前に何度も盛岡に足を運んでいて高齢化する盛岡市の実態を知っている事と、この眼科のお医者さんと実際にお話をした事があるからです。
日本では東京や都会に住む人が過疎化する地方の問題を表面的に捉え、地方の古臭いウェブサイトを見れば綺麗なウェブサイトを提案し、デジタルが進んでいなければ DX を提案する事態が起きています。しかし地方の現場に行くと、そもそもデジタルを必要と思っていない人が実に多い事に気づきます。
台湾から日本に進出する企業、そして日本から台湾に進出する企業も同じような事をしていると僕は思っていて、要するに自分達の思い込みで、相手は〇〇が必要と決めつけ、宣伝活動をしているという事です。僕はこれが起きる理由は対話不足だと思っています。
データでは見えない企業や人の悩み、目的の明確化
日本の田舎ではデジタル化が進んでいない事は事実です。東京でも多くの日系企業の間でデジタル化が進んでいない事も事実です。しかしこれらの事実を表面的に捉え、「デジタルが必要」と捉えるのは少し浅いと思っています。
盛岡市の眼科の事例だと、多くの人は古臭いウェブサイトを見て、それが悪いと決めつけウェブサイトの更新を提案しようとします。ではその目的は何か?恐らく「集客」です。しかしこの眼科では集客は必要ありません。
僕が母の友人の眼科の方と話をした結果、彼女に必要なのは人手だとわかりました。彼女は人材不足と後継者問題を抱えています。従って僕がもしも彼女にウェブサイトの提案をするなら、ウェブサイトを更新すれば人手不足が解消できるかもしれないとコミュニケーションします。
同じウェブサイトの提案なのに、コミュニケーションを「集客」から「人手解消」と変えるだけで効果が全然違います。僕がこの提案に行き着いたのはデータでは見えない、対話という定性的な調査からです。
もしもこれをご覧の方でどこかの国に進出したものの苦戦をしている、或いは今後台湾や他の国に進出しようと考えている方は、まずはターゲットと決めた人と対話をしてみてはどうでしょうか?多分答えが見えてきます。対話した結果、「ちょっと違うなー」と思えば、ターゲットを変えればいいと思います。
以前僕が主催した規格外の野菜販売も初めはレストランを相手にしようと思いましたが、レストランのオーナーに実際にインタビューをした所、「仕入れコストが下がるよりも味が変わるのが嫌だから規格外野菜の購入は難しい」と言われました。
そこで規格外の野菜のターゲットは味よりも価格を重視する一般消費者に変更しました。
答えは現場やターゲットと話しをしたりする事で見えてきます。僕は今後タイに進出しようが、アメリカに進出しようが、同じ事をすると思います。
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