こんにちは、台湾でウェブマーケティングのサービスを提供する applemint 代表の佐藤 (@slamdunk772) です。
Google が最近 P-max という広告メニューを出しました。この広告を一言で言うと「全自動」です。
広告素材とキャッチコピーを入稿すれば、 Google が広告主の目的に合わせて、最適な場所に最適な人に対して広告を表示します。
例えば広告主が「販売」を目的とした Google 広告をする場合、Google はもしかしたらまず YouTube に広告を表示し、その後イメージ画像に広告を表示して、終いには検索結果に広告を表示するかもしれません。
このプロセスとロジックは Google のAI のみぞわかります。僕達 applemint でも早速導入をした訳ですが、効果が割と良いです。
しかし、効果が良い時ほどその効果が良い理由を理解し、悪くなった時に備えるのが大事です。
このブログでは Google の新しい広告メニュー P-MAX とは何か?Google の狙いは何か?そして P-MAX が暗示する台湾における今後のデジタル広告の在り方についてお話をしたいと思います。
少し長文ですが、台湾でデジタル広告をする人にはかなり重要な内容になるので、横文字に対してアレルギー反応を示さずに読んで頂けると幸いです。出来る限りわかりやすく説明します。
- 2023年3月のP-max のアップデート
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P-max 広告は2022年に導入され、この1年間で色々な課題が指摘されました。
例えばP-max はコンバージョンを優先するため、会社名やブランドキーワードで広告を多く露出していました。
しかし今後は会社名の除外が出来る様になります。(いくらかの柔軟性が出る)
P-MAX とは?
Google が出した新メニュー P-MAX とはイントロでもお話ししたように、Google の全自動の広告メニューです。広告を出す側は、広告の目的さえ選べば後は Google が目的に合わせて、広告の出稿先を勝手に決めます。
知らない方のために Google の広告出稿先をお伝えすると、YouTube や Google 検索、ウェブサイト内のバナー、Gmail、Google アプリが含まれます。
P-MAX のメリットは、Google の AI が目的に沿って最適な人に、最適な広告を出すことなのですが、デメリットはそのメカニズムを誰も解明できない事です。つまり P-MAX をした結果、ECサイトの購入はいっぱい来たけれどその理由は誰にもわからないので、仮説を立てる事ができません。
従って、広告代理店は広告主に広告の効果を報告する際、「AI が自動で色々やっているので、よくわかりません」としか報告できません(苦笑)これはマジです。
手抜きと思うかもしれませんが、これが本音です…
Google の狙いは?
そんな全自動の P-MAX を Google が提供した狙いは何でしょう?僕は主に二つあると思っています。
一つは自動化を更に進めることで、より多くの広告主を獲得する事です。今までデジタル広告というと、やり方がよくわからないという人が大半だったと思います。
これが全て自動化すれば、デジタル広告に詳しくない人も、目的さえ設定すれば Google が勝手に広告を始めてくれます。もう一つの狙いは、Google の更なる収益アップです。
Google は元Facebook COO シェリルサンドバーグ氏が Google にいた時代に、中小企業を顧客にした事で成長した会社です。
Google の収入源
Google は、今まで自分達の広告ビジネスの収益を最大化する上で、一つの弱点を抱えていました。それは収益の大部分を検索広告に頼っている事です。
下は2021年の Google の収益ですが、ご覧のように広告事業は YouTube と Adsense を足すと、全体の80%を超えます。
近年、YouTube 広告からの収益も伸びていますが、一番安定した収益を上げているのは検索広告です。では、なぜ検索広告の収益が安定しているかというと、検索広告の効果が良いためです。
例えば「サッカーボール」と検索した人に、サッカーボールの広告を表示する事は、ランダムにサッカーボールの広告を表示するより、よっぽど効率がいいです。
こうした背景から、検索広告は適切なターゲットに効率よくアプローチ出来る事から多くの広告主に長年好かれてきました。
そんな便利な検索広告ですが、サービスを提供する Google 側は一つの悩みを抱えています。
それは、検索広告はユーザーが検索をしなければ収益化できない事です。仮に 5,000社が「サッカーボール」というキーワードに対して検索広告をしても、誰も「サッカーボール」と検索をしなければ Google の収入はゼロです。
Google は検索広告が表示されて、ユーザーが検索をクリックして収益化できる、クリック課金という制度を導入しています。
日本では Tver や色んなテレビ番組で Google が広告を流してますが、これは人々に何でもいいから検索をさせるきっかけを作っているためと思われます。
なぜなら人々が検索をすれば、広告を表示するチャンスが増え収益が増えるためです。
しかも最近は ChatGPT という 対話型 AI サービスが出てきて、 Google は新たな脅威にさらされています。
Meta (Facebook) の収益化方法
Google のクリック課金に対して、競合である Facebook (Meta) の課金モデルは異なります。
Meta は広告の表示回数に対して課金します。つまり、 Meta は ユーザーが広告をクリックしようがしまいがユーザーに広告を表示さえ出来れば、結構無制限に収益化できます。
そうすると彼らにとって大事なのは、アクティブなユーザー数になります。
台湾に関して言うと、台湾の人は未だに大の Facebook 好きで、アクティブユーザー数は人口2300万人中、2000万人を超えるとも言われています。そのため台湾では Facebook 広告は割と効果的に EC の売上に貢献してきました。
一方の Google は広告主が設定した特定のキーワードをユーザーが検索をすれば効果的ですが、検索をしなければ収益化できないジレンマを持っています。
そこへ来て P-MAX の登場です。
今後も Google のクリック課金制度は変わらないと思いますが、今後はユーザーの検索有無を問わずに、 AI が目的のために最適と判断した場所にはいつでも広告が表示されます。
ユーザーは広告との接触回数が増える事で広告をクリックする可能性が増え、その結果 Google の売上は更に上がるというロジックです。
まとめると、P-MAX の狙いは以下です:
- Google P-MAX の狙い
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- 1. ミックスメディア(目的に沿って、YouTube や検索など色んな場所でユーザーと接触して、広告効果を上げる。)
2. 広告の収益アップ:ユーザーと広告の接触回数を増やして売上UP - 3. 広告をしたい広告主を増やす
- 1. ミックスメディア(目的に沿って、YouTube や検索など色んな場所でユーザーと接触して、広告効果を上げる。)
アドテクで一喜一憂する時代からの変化
ここまでご覧になった一部の方は、「今後はP-MAXをすれば AI が全て解決してくれる」と思ったかもしれません。僕は全くそう思っていません。P-MAX はあくまで目的を達成する手助けをしてくれるだけです。
そして大部分の企業が広告をする目的は販売促進です。
つまり P-max がしてくれるのは、購入してくれる確率が高いと判断したユーザーに広告を表示する手助けだと僕は解釈しています。
もちろん、広告を見せて購入意欲を湧かせる(所謂 Nurture)お手伝いもするでしょう。しかし広告に Nurture まで求める事は無理があると僕は思っています。
まとめると P-MAX のようなAI を使った全自動の広告が出る時代に、企業が意識しないといけないのは以下の2点だと思っています。
- P-MAX 及びアドテク全自動化時代の鍵
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1. リテンションの向上
2. 機能訴求からブランド訴求へ (ストーリー強化)
3. 広告を見る前の段階での Nurture
今後 P-MAX がみなさんのサービスを購入するきっかけを作ってくれるなら、そのユーザーを如何に離さないかが大事になるのはなんとなくわかります。僕だったらユーザーとのオフラインやオンラインの交流を増やすでしょう。
次に、僕はブランド力の強化が必要だと思っています。P-MAX とブランド強化はどう関係するのか僕なりの解釈を説明させてください。
仮にみなさんが化粧品メーカーA社に勤務していて、 P-MAX の広告をしたとします。みなさんは P-MAX 広告の目的を「販売」にして、ECサイトでの販売を強化しようとしています。
そこへ、とあるユーザーが「化粧品 おすすめ」と検索をしたとします。この時に、このユーザーが A社 の事を知っていたら購入確率はどうなるでしょう?
恐らく高いので P-MAX は当然広告を表示する判断を出します。Google はみなさんが A社の事を知っているかどうかは Google chrome の検索履歴から学べます。
つまり、広告に売上を頼るのではなく、コンテンツを通じてブランド発信を強化し、P-max に販売をアシストしてもらうのが正しい P-max との付き合い方だと思っています。
また、P-max は比較的に安い単価で大量に広告を露出できる特徴があります。知名度が低いブランドや新規参入者に優しく見えますが、結局ブランドストーリーがない会社や HP がダサい企業はユーザーに選ばれないでしょう。
結局の所、今まで広告のテクノロジーに助けられて機能訴求で売上を上げていた会社も、良い商品を作ってリテンションを上げ、ブランドストーリーを強化してP-MAX に選ばれる確率を上げる事が大事になります。
長文をご覧いただきありがとうございました。
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