こんにちは!台湾でデジタルマーケティングの会社 applemint の代表を務める佐藤(@slamdunk772) です!
今日は2023年10月現在の台湾のライブコマースの現状についてお話をしたいと思います。中国ではライブコマースが当たり前のように行われているというお話を聞いた事がある人は多いのではないでしょうか?
中国ではデジタル決済が日本や台湾よりも遥かに進んでおり、その結果、ライブ中にデジタル決済を通じて直接商品を買う習慣が自然と根付きました。それでは中国のお隣の台湾はどうでしょうか?
結論から言うと 2023年現在、台湾のライブコマースはあまり流行っているとは言えないというのが僕の意見です。データを見ると、ライブコマースに興味を持っている企業や、ユーザーの割合は増加していたりするのですが、中国のように百貨店でライブコマースを行いながらショッピングをしている人を見るような事はレアです。
では台湾ではなぜライブコマースがイマイチ根付いていないのでしょうか?今回のブログでは台湾のライブコマース事情についてお話ししたいと思います。
台湾のおけるライブコマースのデータ
まずは台湾におけるライブコマースのデータについてお話ができればと思います。『數位時代』という台湾のデジタルマーケティング事情を扱う有名媒体の記事によると、ライブ配信及びライブコマースは緩やかに成長しています。
以下は記事を参考にした、台湾における SNS 上での “ライブ配信” に対する注目度です。これを見ると台湾ではコロナ禍を気にライブ配信の注目度が爆発的に上がっているのがわかります。
こうしたライブ配信の注目度を受けて、台湾では Shopee と LINE がライブ配信で直接購入ができるサービスをスタートさせました。
ここだけを切り取ると、「お、台湾のライブコマースはなんか盛り上がっているな!」と思う方が多いと思います。しかし台湾に住んでいる僕には台湾でライブコマースが浸透している気がイマイチありません。
もしかしたら僕が年をとりすぎてて流行に追いついていないからかもしれませんが、僕が台湾のネット上で一番購買意欲がある30代前半から40代の一部女性に聞いた話だと、LINE や Shopee のライブコマースは知っているけど、”流行っている” 感じはしないとの事でした。
では、どうして台湾ではライブコマースが “流行っていない” のか? 次の章では僕なりにその理由を解説したいと思います。
主要 SNS で決済機能がついていない台湾
台湾では LINE と Shopee という大手プラットフォームのライブ配信購入機能を使えば、ユーザーはライブ配信中にそのまま購入が可能です。しかし數位時代の記事で明らかになったのは、台湾人がライブ配信を好んで視聴する媒体は LINE でも Shopee でもないという現実です。以下がデータです:
データによると、台湾人の73.1%が Facebook、YouTube、Instagram といった媒体のライブ配信を好んで見る傾向にあり、その他は圧倒的なマイノリティです。
残念ながら台湾では、Facebook や YouTube、Instagram といった媒体にライブコマースの機能は実装されていません。それでもこうした媒体を通じてライブコマースを試みるユーザーはたくさんいます。
しかしながら、現時点での Facebook におけるライブコマースはライブ配信の動画をクリックして直接購入するような機能がないので、配信中の購入は以下のやり方に限定されます:
- コメント欄に URL を載せて、そこから購入
- ユーザーがコメント欄に購入意思を表示し、ライブ配信側がその後に個別に連絡
つまり Amazonのようにワンクリックで気軽に購入出来ないので、たとえ100人のユーザーがライブ配信を通じて URL をクリックしても、購入をするにはそこからクレジットカード情報の入力等必要なので、購入者が減るという事です。
実際僕らもライブコマースを以前お手伝いした事がありますが、「カゴ落ち」と言って、カートに追加後決済をしないで諦めたユーザーはかなりいました。
インフルエンサーを活用したライブコマースがうまくいかない理由
「だったらインフルエンサーを活用してライブコマースをしたらどうか?」という事で、インフルエンサーの方を活用したライブコマースのご相談をよく受けるのですが、これも正直微妙だと僕は思っています。
まずインフルエンサーを活用したライブコマースは単純にコスパが悪いです。台湾ではインフルエンサーの単価が2019年ぐらいを境に一気に上がり、ライブコマースをお願いするとなると、何十万元(50万円以上〜)も取られます。
何十万元を払って、それ以上の売上が出来ればいいのですが、台湾ではそれが中々うまくいきません。理由はいくつかあります。まず一つ目は前章でもお伝えした通り、インフルエンサーがフォロワーを多く抱える、Facebook やインスタなどの主要SNSではライブ配信からの直接購入が出来ません。
次に、「ユーザーは別にインフルエンサーが理由で購入をしていない」という点が挙げられます。以下は消費者がライブコマースで購入をする理由です:
1位は「ディスカウント」で、次にユーザーが重視しているのが「商品が自分にマッチするか否か」です。3位は「ライバーの説明が細かいかどうか」で、4位に「ライバーが誠実か否か」というのがランクインしてます。
つまりライバーのフォロワー数によって購入が左右される事はほぼマイナーで、結局はディスカウントと商品が自分のニーズにマッチするか否かが大事という事です。
なぜ台湾ではこういう結果になったかと言うと、台湾人のインフルエンサーに対するプロモーションの信頼が低いのが原因だと僕は考えています。
以前僕は以下のポッドキャストで、台湾は台湾のインフルエンサーに対する規制が緩すぎるというお話をしました。
内容を要約すると、台湾にはステマを取り締まるような規定はあるものの、無いに等しく、インフルエンサーはたとえ企業からお金を受け取っていても、動画内で「企業案件」である旨を表示する必要はありません(2023年10月現在)。これにより台湾人のインフルエンサーは『PR』の表記をわざわざしなくなりました。
2016年代頃は、消費者もインフルエンサーの PR = 本心での PR と勘違いをしたのですが、次第にステマに対するリテラシーが上がり、現在ではインフルエンサーが紹介した商品はスルーされるのが習慣化してしまいました。
その結果、2023年現在、企業はインフルエンサーに多額の費用を払ってもほとんど回収できない事例が続出しています。
知り合いの広告代理店さんに聞いても返ってくる答えは同じです…
ひとまずここでお伝えしたいのは、ライブコマースをするにあたって、わざわざ高い費用を追加で払ってインフルエンサーを起用する必要性はどうやらないという事です(自社の SNS にそもそもフォロワーがいない場合は検討可)
台湾のライブコマース成功事例
ではそもそも台湾でライブコマースがうまくいった事例はあるのでしょうか?あります!それが Brand Off さんのライブコマースです。Brand off さんは Facebook でライブ配信を度々行い、中古のブランド品を販売しています。
Facebook ページを見ていただくとわかりますが、ライブ動画の投稿はシェア数が3桁を超えていて、コメント数も半端ないです。そもそものフォロワー数もかなりいます。ライブ配信を通じての詳しい販売方法はわからないのですが、 恐らくコメントしたユーザーに直接購入用の URL を送るか、コメント欄に商品ごとの URL を貼って、そこから購入してもらうかのどちらかです。
なぜBrand Off さんのライブコマースはうまくいっているのでしょうか?その理由は二つあると思っています。まず Brand off さんのライバーの方はおしゃべりが非常にうまいです。
インフルエンサーのように影響力はないかもしれませんが、軽快なトークで商品を細かく説明されています。次に、Brand off さんがライブで販売する商品が台湾人のニーズに合っています。
以下のデータを見るとアパレルやバッグは、台湾におけるライブコマースの中で一番売れるカテゴリーの一つです。
これらを総合すると、僕は台湾のライブコマースは以下のように結論づけています:
- LINE や Shopee でライブコマースが行われているものの、そこまで浸透していない
- 浸透しない最大の理由は主要SNS (FB、インスタ、YouTube) でライブコマース機能が実装されていない事
- 多額の費用をかけてインフルエンサーにライブ配信をお願いする必要はなし(それよりも社内の喋りが上手いような人の方が良い)
- というか台湾ではライブコマースはやってみてもいいけど、やらなくても良し
- やるならアパレルとかが良さそう
という事で、以上 applemint 代表佐藤から台湾におけるライブコマースの現状についてでした!
applemint ではライブコマースで瞬間的に売上を伸ばすような施策よりも、台湾で地道に時間をかけて販売するマーケティングのお手伝いをしています。もしもこの記事を読んで僕らに興味を持った方は是非一度お問い合わせください!
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