こんにちは、台湾でウェブマーケティングのサービスを提供する applemint 代表の佐藤 (@slamdunk772) です。
先日不動産関連の方とお話をする機会があったので、長年思っていた疑問をぶつけてみました。その疑問とは、「なぜ台湾 (台北) のマンションはこんなに高いのか?」ということです。しかし残念ながら、その方もよくわからないとのことでした。
台湾 (台北) の不動産事情にあまり詳しくない方のためにちょっと説明をすると、台北ではすぐにマンションが立ちます。マンションが立つこと事自体は日本でもよくみられる現象だと思いますが、問題はその価格です。台北市のマンションはほとんどが億ションです…
しかも台湾人の平均給与は月収4万元ちょっとです。日本円で約15万円の月収の国民が億ションなんて夢のまた夢です….なぜこんなに高いのでしょうか?
このブログでは不動産の方でもわからなかった台湾 (台北) の不動産 (マンション)の価格の謎について解明できればと思います!
ちなみに結論を話してしまうと、どうやら金融機関や保険会社による購入が原因のようです。
現状(台北の新築マンションの数)
台北のマンションがなぜ高いのかという核心に迫るため、まずはマンションの現状を探っていきたいと思います。最初に近年台北のマンションがどれだけ新しく建っているのか見ていきたいと思います。
調べたのは2018年と2019年の約 2年間の台北市の新築マンション数の推移です。本当はもっと遡ってデータを見たかったのですが、いくら探しても2018年と2019年の分しかありませんでした。以下がその数字です。
実はここ2年間新築マンションの数は年々減っているということがわかりました。
ただし!
これを見るとここ2年間でとんでもない数のマンションが台北市に新しくできていると思いませんか?100って…..
個人的に相当数のマンションが建っていると思うのですが、この数字がどれだけすごいのか知りたいので、台北の2013年の新築マンション数と比べて見ます。結果は以下です。
サイトによって微妙に数字が違うのが気になりますが、自由時報によると2018年は152のマンションが建設され、2013年は58だったそうです。(2018年のマンション数は数字の不一致が起きてますが、参考元が違うために起きています。何れにせよ150以上のマンションは建ったと考えていいと思います)
ではなぜこんなにも多くのマンションが立っているのか?
それはマンションが売れるからでしょう。売れないのにマンションが新しくできるわけはありません。ではどれくらい売れているのでしょうか?
具体的にどれくらいの数の部屋が売れているという数字は見つからなかったのですが、売り出されている新築マンションの売上率があったので共有します。売上率とは何か?例え話をします。
例えば100個マンションが建って、それぞれ部屋が10個あったとしたら1,000戸部屋があります。もしも1,000戸ある部屋のうち、1,000戸部屋が売れたら売上率は100%です。下は台湾のマンションの売上率を表したグラフです。
2012年のマンションの売上率は78%です。つまり1,000戸部屋が売り出されたら、780戸が売れたということです。この数字は非常に高いのですが、高いのは恐らく新築のマンション数が少なかったからだと思います。
2014年に売上率が一度ガーンと下がりますが、その後ある程度戻ります。2019年は大体49%の新築マンションの部屋が売れているようです。
つまり、今これをご覧の読者が台湾のどこかで出来立てホヤホヤのマンションを見たら、そのうちの大体半分は売れているということです。僕はこの49%という売上の数字がいいのか悪いのかわかりません。悪ければ新しいマンションは建たないと思うのでおそらくいいのでしょう。
何れにせよ、結構な数のマンションが建っているということはわかりました。
参考:2018年と 2019年のマンション数:
北市新成屋建案飆新高 未來恐陷賣壓潮
重劃區帶頭衝 2019年全台推案量破一兆五
台北のマンションの価格
続いては台北のマンション価格についてお話をします。結論から話してしまうと、冒頭でもお話したようにめちゃくちゃ上がってます。
マンション (不動産) の価格が上がる理由を調べたところ一般に以下の理由で不動産価格は上がるようです。
- 不動産価格が上がる理由
-
1. 地価上昇
2. 建築費の高騰
3. 低金利
4. 景気好調
5. イベントの開催
順に見ていきます。台湾はどれだけ当てはまるのでしょうか?見ていきます。
まず#1の地価上昇ですが、地価上昇は #2 – #5によって引き起こされると思うので、ひとまず無視します。#2建築費の高騰ですが、台湾の人件費は年々上昇しており、最低賃金は結構上がっています。
- 台湾の最低賃金
-
2017:133元
2018:140元
2019:150元
2020:158元
つまりマンション高騰の理由の一つとして建築費の上昇はあり得ると思います。
次に#3の低金利ですが、台湾は日本同様に低金利です。また、#4の景気好調ですが、ジェトロのデータを見ると、台湾の GDP は毎年コンスタントに2.6-2.8%の成長らしく、日本と比べると景気はいいと言えるでしょう。
#5のイベント開催ですが、台湾は日本と違ってオリンピックやW杯等、でかいイベントの開催は予定していません。(そもそもコロナウイルスの影響でそれどころではありませんが…)
つまり、台湾には不動産価格が上がる理由が確かに存在することがわかりました。
最後に、ひとまず無視していた地価上昇について述べます。コチラの記事では台湾の不動産価格上昇は地価上昇が原因だと述べています。つまり、上でも述べたように、地価が上昇する理由はあり、地価が上昇して台湾の不動産価格が上がっているということです。
具体的にどれくらい上がったの?
次に具体的にどれくらい上がったか見ていきましょう。
wikipedia に各国の年収と不動産価格の比率が載ってました。それによると 2016 年の台湾の不動産価格は年収に対して、12.87倍でした。日本は20.17倍で世界第12位でした。
ちなみに1位は香港で37.57倍です。つまり台湾では2016年の時、12.87年間年収に一切手をつけなければ家が買えたという事です (笑)これが2019年になると、台湾の不動産価格は年収比なんと28.91倍で世界3位になりました!
ひぇ〜。日本は逆にだいぶ下がって 11.25倍になりました。なぜこんなことが起きたのか?不動産価格と年収の比率が上がるということは2つの理由が考えられます。
A) 不動産価格がとんでもなく上がった
B) 不動産価格はそのまま or 上がったものの、人々の年収が下がった
年収が下がったことが不動産価格に影響した可能性があるので、念の為台湾人の年収を調べます。
台湾人の年収は上がっています…
つまり台湾の不動産価格と年収の比率が上がっている理由は、不動産が
とんでもない値段で上がっているということです。そしてこの原因はもはや低金利や好景気で説明がつくものではないと思います。なぜなら好景気と言えど、GDP 成長率はたかだか2% ぐらいだからです。
また、マンションやアパート、オフィスビルの家賃が高くなっているのは、不動産購入オーナーが高値で不動産を買ったため、元手を取るために高くしているものと思われます。
台湾の不動産上昇の理由とは?
不動産の方がなぜこんなにマンションの値段や家賃が上がっているのかわからないと言った理由がわかりました。では、なぜこんなにも台湾の不動産は値上がりしたのでしょうか?
いろんな記事を見ましたが、皆色んな意見があるようです。一番有力なのが、冒頭でも話したように金融機関や保険会社による購入です。
金融機関や保険会社は不動産を安定した資産及び、リスクが低い投機対象として見ているようです。実際、台湾の不動産価格は長いスパンで見るとほとんど下がっていません。銀行や保険会社は融資や証券購入という投資の他、不動産を積極的に買っているということです。
例えば大潤發や CITYLINK といった商業施設は潤泰企業集團というコングロマリットの傘下にあり、の会社は南山人壽保險股份有限公司という保険会社も持っています。商業施設も不動産です。
今回お話ししたのはあくまで一説で、台湾の不動産バブルに関しては他にも理由があるそうです。とりあえず今回の調査でわかったことは、台湾には不動産の価格が上昇する要素があるということです。
台湾不動産神話について
最後に、僕が台湾で暮らしていて台湾の人が不動産に対して感じていることをシェアしてブログを終えたいと思います。
台湾では不動産投資はやらないといけない投資のように認識されている気がします。
僕の友人は、自分の母親が家を買え!マンションを買え!としつこく言ってうざいと言ってました(笑)僕も知り合いから台湾で不動産を買わないのか?と言われたことがあります。「いやいや、台北は高すぎて買えないよ」というと「じゃー基隆や新北で買えばいいじゃん」と言われました。いや、そういう問題じゃ….
僕は個人的に不動産を持つリスクというのは確実に存在すると思っていて、その一つが天災です。大きな地震が来て、マンションに亀裂が入れば不動産価格は暴落します。近年関東で大雨によって川崎のマンションが浸水したのは記憶に新しいかと思います。
また、僕は正直今後もずっと台湾にいると思っていません。自分が今後も住むかわからないのに、不動産を買う気になれません。「とにかく不動産を先に買って、入居者を探して家賃収入を得るんだよ!」と言われても、入居者なんて不確定でわからないものに投資する気はありません。
何れにせよ、台湾では不動産は外れない投資対象と広く思われており、僕はそんな意見に対して非常に懐疑的です。ただ、不動産を投資対象として見るのではなく、ずっと住む場所として購入するのはありだと思っています。でも、同じ場所に8年以上いたことない僕には無理でしょう(苦笑)
以上台湾 (主に台北) の不動産に関してでした!
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