こんにちは、applemintの津山です。今回は台湾のスーツ市場についてご紹介します。
台湾で有名な日系のスーツ企業といえば、かつては「洋服の青山」でした。しかし残念ながら「洋服の青山」は2021年に台湾から完全撤退し、日系の大手スーツ企業は市場から姿を消しました。
しかし台湾では、出勤でも半分くらいはスーツを着ていることがわかります。筆者は以前タイに出張しましたが、タイ現地の人と比べるとかなり高い比率でスーツを着ています。
しかも台湾は他の東南アジアに比べ、給与が高く、購買力的にもスーツを売る余地がある市場です。
ただ、洋服の青山が失敗した理由を顧みず、日系企業だから大丈夫だろうという甘い考えで台湾に進出することは危険です。なぜなら、同じ理由で失敗するリスクが高いからです。
彼らは中山駅(東京で言うと新宿駅に近い)という超好立地をはじめ、台湾の一等地に路面店を持っていましたが、撤退を余儀なくされたのです。その理由は一体なんだったのでしょうか?
今回は、台湾スーツ市場概要、洋服の青山が撤退に追い込まれた原因、そして台湾で成功するためのマーケティングを、台湾現地のマーケターである筆者がまとめてご紹介します!
Contents
台湾のスーツ市場概要と消費者ニーズ
まずは台湾におけるスーツ市場の最新動向と、消費者のスーツの好みについて簡単にご紹介します解。
台湾のスーツ市場概要
台湾の男性服(スーツ以外も含む)年間売り上げは、約900億台湾ドルというデータが出ています。
男性が1年で購入する洋服は約10枚、うちスーツは1年で1~2着なので、20%がスーツの費用です。また台湾人のうちスーツを着る労働力(15歳以上の就業者・失業者)の対象となる割合は50%程度なので、最も多くて400億円程度と想定されます。
男性服売上(年)約900台湾ドル X 20% X 50% = 約90台湾ドル= 約400億円程度
(23年7月時点のレート)
日本の紳士服の年間売上高「約2,000億円」と比較すると、台湾の市場は約20%程度で市場規模は大きくありません。
ですが台湾の人口は約2,300万人で、日本の総人口の約20%程度なので、一人当たりの消費量は日本並みになる、と考えられます。
台湾消費者のスーツに対するニーズ
台湾の消費者は、主にビジネスでスーツを着用しますが、最近では日本と同様にホテルで結婚式を挙げるケースもあり、プライベートでの着用機会も増えてきました。
そこで、台湾のスーツ消費者が気にする点を、以下にまとめてご紹介します!
上記はおしゃれでスーツを楽しむ人も含まれるため、ビジネス用途よりはやや高めに偏っています。
実際にネット上では、仕事用と割り切って3,000台湾ドル程度のスーツを購入している人も見られました…。
「洋服の青山」の台湾撤退背景とその教訓
「洋服の青山」は一時期台湾市場で成功を収めましたが、2021年には完全撤退に追い込まれました。その、撤退理由から、台湾に進出を考える日系企業がすべきことを提示したいと思います。
スーツの青山の失敗原因をまとめると、『時代のニーズを捉えきれなかった』こと『実店舗に頼りすぎていた』ことにあると考えています。
「洋服の青山」が台湾撤退した主な理由は、新型コロナウイルスの影響による販売不振でとされています。コロナ前は30人以上は訪れていた店舗も、コロナ期はほとんど人が訪れなくなりました。
しかし、実はそれ以前から台湾でスーツ需要に翳りが出ていました。日本同様、ここ数年で服装規定が緩くなり、さらにUNIQLOなどもビジネスカジュアル服を扱うようになり、そちらに流れる人も増えたのです。
実際に筆者も台湾の日系企業に勤めてましたが、スーツを毎日着てるのは営業+本当に上層部の幹部だけです。
そこにコロナ禍が重なったことで、西門店や中山店などの高額な家賃が負担となり、「洋服の青山」は撤退を余儀なくされました。
しかし同時に、台湾ではコロナ禍で爆発的にオンラインショッピング(EC)の利用者が増えるという事態が起きました。
もしコロナ前から、少しずつECやデジタルマーケティングを活用した施策にシフトできていたら、もしかすると撤退に至らなかった可能性も考えられます。
つまり、今後進出される日系企業様は、絶対にデジタル施策を一緒にすることをお勧めします。
台湾のスーツ業界の競合
台湾のスーツ市場はコロナ禍で縮小したとはいえ、手堅く業績を伸ばしている企業もあります。以下では台湾における主要なスーツ販売店と特徴について説明します。
台北・その他主要都市にお店を構えるスーツ販売店:
店名 | 店舗数・販売方法 | 特徴 | 用途 | スーツの種類 | 値段 |
---|---|---|---|---|---|
凡登男仕禮服 | 4店舗 | おしゃれでスタイリッシュ、柄物も多い | パーティ、結婚式、休みの日向け | オーダーメイドやレンタルがメイン | オーダーメイドの場合:NT$20,000元以上 レンタルの場合:NT$5,000元以上 |
GEM經典西服 | 10店舗、Shopee販売 | ビジネスで使えるスーツから柄物まで、お手頃価格 | パーティ、結婚式、ビジネス向け | 既製品とオーダーメイド | オーダーメイドの場合:NT$6,000元以上 既製品の場合:NT$5,000元以上 レンタルの場合:NT$2,500元以上 |
ElegaZzle | 7店舗、オンラインショップ販売 | ビジネスからパーティまで+女性スーツを扱っている+小物も豊富+3Dアプリもある | ビジネス、パーティ、結婚式向け | 既製品とオーダーメイド | オーダーメイドの場合:NT$12,000元以上 既製品の場合:NT$5,000元以上 |
そのほか、G2000(シンガポール発)、UNIQLO、といったチェーン店もライバルになり得ると言えるでしょう。
台湾で売り上げを伸ばしているチェーン店を見ると、ビジネス用というよりもパーティや結婚式の用途に強みがあり、比較的手頃な値段でオーダーメイドをやっていることがわかります。もちろんECの販売も並行して行っています。
台湾ではこの安価なオーダースーツにどう対抗するかが重要なポイントとなりそうです。
台湾スーツ市場進出に欠かせないデジタルマーケティング
最後に、台湾市場への進出を考える日系スーツ企業が、台湾で成功するために欠かせないマーケティング対策をご紹介します。それは以下の5つです。
- 台湾市場をターゲットにした繁体字のウェブサイト&オンラインショップ(EC)
- 信頼性を得るための実店舗
- Google、Facebook、Instagramを主軸としたデジタル広告
- SNS運用(Facebook、Instagram、TikTok、YouTube)、特にショート動画
- LINE公式アカウントを活用したCRM対策
台湾で実店舗&ECサイト&デジタル広告が重要な理由
台湾に進出するなら、まず実店舗+ECサイト+デジタル広告の運用がおすすめです。(上記のポイントの1.2.3)
まずECサイトをお勧めするのは青山の撤退理由でも話しましたが、現在台湾ではECサイトの利用率が非常に高いためです。
2023年の台湾人のスマホ利用時間は1日あたり5.5時間、1週間に1度オンラインショッピング利用率する人は60%もいます。日本と比較してもいずれも3~4割程度高い結果です。
しかし一方、台湾ではECで偽物が出回るケースも多く、EC販売だけでは信頼感が得られにくいデメリットがあります。
そこで実店舗です。弊社クライアントでも実際にECだけで成功するケースは多くないので、期間限定でも実店舗を構えて、台湾の消費者に信頼感を持ってもらうことが成功への近道と言えます。
これに組み合わせて、ECや店舗に誘導するデジタル広告を行います。
台湾でECや店舗に誘導するおすすめのデジタル広告については、以下の記事でも詳しくご紹介していますので参考になさってください!
台湾でショート動画運用とLINE公式アカウントが重要な理由
台湾のSNS(Facebook、Instagram)利用率は日本よりも高く、運用はもちろん必須ですが、成果を出すには、縦型ショート動画がいちばんの近道だと考えています。
その背景は、台湾で急速にTikTokユーザーが増えている(2022年400万人程度→2023年600万人超え)ことからも分かる通り、台湾ではショート動画ユーザーが非常に増えています。
しかも、ショート動画は、誰でも簡単に作成できる、ポイントを押さえたらバズりやすい、色んな媒体に投稿できる、というメリットがあります。
弊社でも毎週バズるショート動画を研究しており、1万ビューを超える動画が出ています!!
同時に、台湾の利用者が9割を超えるLINE施策も重要です。公式アカウントを作れば顧客管理が簡単にできる上、LINE PAYは台湾で最も使われる電子決済なので、顧客の行動データを元にした広告は成果が出やすいと考えます。
いかがでしたか?今回はスーツ企業が台湾に進出するために知っておきたい市場の状況やマーケティングのポイントについてまとめました。
今後、もし台湾のトレンドを掴んだデジタルマーケティングを展開したいということであれば、ぜひ台湾に拠点を持つ弊社まで一度ご相談ください。
最新の情報に基づいた最も効果のあるマーケティングを、ご提案させていただきます!
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