こんにちは代表の佐藤 (@slamdunk772) です。
みなさんが普段何気なく使用しているフォントですが、実は気づかぬうちに著作権侵害や違法行為をしている可能性があることを知っているのはご存知ですか?
台湾ではフォント業界が中国語(繁体字)のライセンス費用を厳しく取り締まる風潮にあり、気付いた時にはライセンス料を要求されることになる可能性もあります。
今回のブログでは2019年台湾で起きたフォントに関する重大事件を取り上げ、改めて台湾におけるフォントの著作権侵害および民法について考えたいと思います。また、台湾におけるフォントの商用利用を定義して、企業や個人が行うべき対策について話したいと思います。
Contents
フォント会社からユーチューバーへの挑戦状
華康という台湾のフォント会社をご存知でしょうか?以前以下のブログで華康のご紹介をしました。
この会社が今年の9月、華康のフォントを動画内で使用しているユーチューバーに対して課金をすると突如発表しました。そして華康のフォントの多くはなんと様々なコンピューターにデフォルトでバンドルされていたらしく既に使ったことがあるユーチューバーは大激怒し始めました。
ネット上は大荒れです。
中国語が理解できない方には見てもしょうがないのですが台湾の某有名ユーチューバーの方が事件の詳細および、ユーチューバーを代表して華康側と会議をした内容を話しています。
簡単に要約するとユーチューバーが華康のフォントを使う場合、毎年24,000NT (約80,000 円)のライセンス費を払わないといけないというものです。
また、今すぐライセンス費を払えば華康のフォントを用いた過去の動画はライセンス費を免除すると華康側が声明を出したようです。有名でそれなりに収入があるユーチューバーは問題ないのですがそうでないユーザーは死活問題です。
何はともあれここで話したいのはどうやらフォント会社が自社が保有するフォントのライセンスに関してきちんと取り締まりをし始めようという動きがあることです。
台湾におけるフォントの取り締まり
台湾におけるフォントの取り締まりとはどういうことか?
フォントを取り締まる場合、フォントの会社はまず著作権を侵害していないか、或いは民法に反していないか見ます。台湾における民法については正確かどうかはわかりませんが wikipedia があったのでご覧ください。
wikipedia を要約すると台湾の民法には商法も含まれ、なんらかの形で商法に違反した場合フォント会社は民事訴訟を起こせるものと書かれています。
一方で著作権侵害はフォント会社が予め商用利用に関して明記した規定の範囲外でフォントを使用した場合、訴えられる可能性があります。
次に民法に触れるケースと著作権侵害のケースを架空のお菓子会社を使ってご紹介してみたいと思います。
民法?著作権侵害?お菓子会社 ABC のケーススタディ
仮に架空のお菓子会社 ABC が新商品「もっちり餅」という商品を出し、以下のようなパッケージを作ったとします。(あくまで例です…..苦笑)
もしも上のパッケージ内の「もっちり餅」のフォントは有償で商用利用にはお金を払わないといけないものの、お菓子会社 ABC はフォントに対して一切のお金を払っていない場合どうなるでしょうか?
以下の二つのケースが考えられます:
1. 「もっちり餅」のフォントのライセンスを保有する会社は、お菓子会社 ABC に対して民法の〜条に対して違反していると民事訴訟を起こす。
2. フォントのライセンスを保有する会社は、もっちり餅のパッケージをデザインした制作会社を調べ、そこがお金を払わずに使用していた場合著作権侵害で訴える。
ここで重要なのは著作権侵害はあくまでフォントを利用した会社(デザイン会社など)に責任があるということです。
一方で民法に反した場合はお菓子会社に責任があります。
多くの人はお菓子会社 ABC がパッケージデザインを制作会社に委託した場合、パッケージデザインの責任はお菓子会社 ABC に属すると思いがちですが、パッケージデザインのフォントの著作権侵害は制作した人/会社に対して訴えられます。
つまりお菓子会社 ABC がもしインハウスのデザイナーに制作を任せて、フォントの著作権を侵害したらお菓子会社 ABC の著作権侵害となります。メーカーは大抵の場合制作会社にデザインを委託するため、#2 の著作権侵害で訴えられるケースは少ないと思われます。
しかしながら民法のどこかに反していると訴えられるケースは無きにしも非ずなので、上記 #1、#2 を例として取り上げました。
商用利用の定義、 OS 搭載フォントを迂闊に使う危険性
ここまでまとめると企業側は商用利用が有償なフォントに対してお金を払わずに使った場合、#1 民法のどこかに反した、#2 著作権を侵害したと訴えられる可能性があることをお伝えしました。
ではそもそも商用利用とはどういう意味なのでしょうか?
これは私の解釈ですが私は企業が外部に対して公開するフォントは全て商用利用になると思っています。それにはもちろん会社案内の資料だって含まれると思っています。
ただし商用利用の詳細な定義は各フォントベンダーが個別に定義しているので1つ1つ見る必要があります。
とりあえず外部の目に触れるような資料や制作物に関しては商用利用と認識しておけばいいと思います。
お金を払わず迂闊に有償フォントを商用利用してしまう可能性
例えば windows 10 はシステムフォント(タイトルばーやメニューなど)として游ゴシックというフォントが使われています。
Google で検索をするとこのフォントは字游工房という会社が著作権を有しているフォントということがわかります。
試しに Google で検索してこの会社の HP をクリック後「ライセンス」を確認してみてください。
ライセンスの使用例は以下です。
例えばお客様が訪問にいらした際に渡す資料は游ゴシックを用いて印刷しても問題なさそうです。デジタルな広告や資料は大丈夫そうですが△マークなので使わないのが無難でしょう。
しかしフォントを使うときにいちいちライセンスを調べていたら面倒極まりありません…どうすればいいでしょうか?これには一瞬で解決する方法があるのです。
だからデザイナーは Mac を買う/ Mac の凄さ
結論から言います。
Mac OS に初めから搭載されているフォントは Mac OS であれば商用利用可能です(一部例外あり)コチラのブログに詳しく理由が書かれています。
つまり Mac を購入して初めから搭載されているフォントを使用する場合はいちいちフォントの商用利用とか考えなくていいということです。
デザイナーの多くが apple のコンピューターを買う理由がこれにあるかと思います。(あとはカフェでパソコンを開いてリンゴマークを見せたいとかですかね)
なぜ apple のコンピューターにバンドルされているフォントは商用利用可能か私はいまいちわかっていませんが 、Tim Cook 本人も安心して商用利用してくださいと言っています。
これは私の勝手な推測ですが Steve Jobs が元々タイポグラフィーに非常に興味があり、フォントを作る制作者に対して敬意を払っているためと思われます。
そのため Mac がフォントベンダーに対してライセンスを払っているのではないかと思います。そうするとデザインをする人からすると Mac は恐ろしくコスパがいいのです!!
では Windows はどうでしょうか?
Windows は初めから搭載されているフォントを商用利用する場合は、個別にフォントの著作権を有する会社に商用利用の可否を問い合わせる必要があります。Windows (Microsoft) はフォントの商用利用なんて知ったこっちゃないというスタンスなのでしょう。
では Windows に搭載されているフォントを Mac で使用したらどうなのでしょうか?逆に Mac に搭載されているフォントを Windows で使用したらどうでしょうか?
まずそもそも互換性の問題がありますが Mac OS に入っているフォントと Windows に入っているフォントが同じだとしても別物と考えてください。
(参照:https://fontnavi.jp/zakkuri/105-font_for_mac_win.aspx)
最後に Mac OS に搭載されているフォントをご紹介します。(Windows は見つけられませんでした 苦笑)
https://support.apple.com/ja-jp/HT206872
中国は Mac OS も関係ない
ちょっとおまけでフォントに関して中国の興味深いケースをご紹介します。
Mac OS 搭載(バンドル)のフォントは商用利用可能と書きましたがどうやら中国では Mac OS に搭載されていても商用利用は気をつけないといけないことがわかりました。
「北京北大方正電子」という会社がライセンスを保有する Windows 搭載「微軟雅黒」とMac 搭載「蘭亭黒体」の二つのフォントは何と商用利用にライセンスを払う必要があるようです。
なんてことでしょう….
しかも北京北大方正電子が、北京北大方正電子のフォントを使って簡体字で LP を制作したサイトに対してどんどんライセンスの請求書を送りつけているそうです….
怖いですね…
中国の越境 EC の LP を扱うような制作会社は本当に気をつけてください!(ECモール社会の中国ではあまりないかと思いますが…)
(参照:https://lxr.co.jp/blog/2294/)
まとめ〜Windowsでデザインをしている会社は要注意〜
制作会社や広告代理店、インハウスにデザインチームやデザイナーを有する会社でWindows の OS を使っているという会社は本当に気をつけてください。
華康がユーチューバーを標的にライセンス料を求めたようにライセンス料を払っていない場合、ライセンス料をいつ請求されるかわかりません。
また、払わない場合訴訟されるリスクもあることからよく使うフォントでライセンス料を払っていない場合は今のうちに払っておきましょう。
ライセンス料を払いたくない Windows OS 使用の方々は商用利用が可能な Windows 搭載フォントのみを使うか、 無償で商用利用が可能な Google フォントのみを使うことをお勧めします。
ちなみに Windows 搭載フォントで商用利用可能な有名フォントはメイリオです。メイリオはいろんな企業がパワポでも使っているところを見ますが、バナーやポスターのデザインに使うとなるとウェイトが二種類しかないので微妙ですよね….
Mac に今から切り替えてもいいと思いますが過去の制作物はどうにもできないのでご注意を!
Mac ユーザーの方は搭載されているフォントを引き続き商用利用しながらも、中国の北京北大方正電子や台湾の華康が起こしたライセンス料請求に備えて情報収集と慎重なフォント選択を心がければいいと思います。
以上台湾におけるフォントの商用利用及び一般的なフォントの商用利用の考え方でした!
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