みなさんこんにちは、台湾で applemint というデジタルマーケティングの会社の代表を務める佐藤 (@slamdunk772) です🙃
今日は「台湾のマーケティングのゼロ・トゥ・ワン(つまり、ゼロからのマーケティング)」というテーマでお話しします。
台湾でマーケティングの仕事をして8年になる僕が、これまで成功した企業と失敗した企業の実例を交えながら解説します。
この内容は、僕がブログに書かない限り ChatGPT でも提供できないものだと思っています(ただし、このブログを公開すると今後は ChatGPT でも見られるようになりますね😅)
結論から言うと、台湾市場で成功するために必要なのは マーケティング思考 と 長期的な視点 だと思っています。
当たり前に聞こえるので、きちんと噛み砕いて一つ一つ説明します🙃
簡単に言うと、日系企業は我慢強くて結果的に長く台湾でビジネスを続けるケースが多いのだから、それなら 最初から長期目線で取り組んでいれば、より良い結果が得られたはずなのに… と思うって話です。
だからこそ、僕はこのブログを書いています。
少し長文になりますが、Let’s go!
Contents
そもそも台湾市場は本当に狙うべきか?

このブログを読む前に、ぜひ考えてほしいのが 「そもそも台湾市場で本当にビジネスをするべきか?」 ということです。
少し残酷な話をすると、台湾に10年以上住んでいる僕の視点では、台湾市場は 努力に対するリターンがそれほど大きくない という個人的に思っています。
その理由は、台湾の人口は 約2,300万人 しかおらず、日本よりも出生率が低いため、今後市場が大きく成長する見込みがないためです。
2025年現在、台湾の景気は悪くなく、購買意欲も決して低くはありません。しかし、どんなに市場の調子が良くても 人口規模は2,300万人 です。
また、台湾には富裕層は確かに存在しますが、その数には限りがあります。なので進出する段階から、「〇〇億円売上目指します!」って期待はほどほどにした方いいと思います。
市場浸透率と購入頻度の関係
最近、日本で「No.1マーケター」との呼び声が高い 森岡毅 さんが、『確率思考の戦略論 どうすれば売上は増えるのか』という本を出版しました。
この本の中で森岡さんは、マーケティングの第一人者である フィリップ・コトラー氏 のターゲティング理論に対して反対する意見を述べています。
フィリップ・コトラーといえば、STP(セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング) というマーケティングの基本戦略で有名です。
僕自身も STP を意識しながらマーケティングに取り組んでいますが、この手法には ある欠点 があります。
それは、「ニッチなターゲットにしっかりリーチできれば、その中からロイヤルカスタマーが生まれ、ロイヤルカスタマーの高い購入頻度によって売上が上がる」と考えがちになる点です。
しかし、実際には 依存性の高い商品や特別なニーズ向けの商品を除けば、この戦略は難しい のが現実です。
何が言いたいかというと──
台湾のような市場では、最初は多少高価格帯の商品を買える年齢層(やや上の世代)をターゲットにするのはアリですが、
それだけではいずれ頭打ちになるので、将来的にターゲットを広げる施策を、最初から視野に入れておくべきだということです。
市場浸透率と購入頻度の関係

バイロン・シャープ氏が以前出版した『ブランディングの科学 誰も知らないマーケティングの法則11』では、理論上「市場浸透率が低くても、購入頻度が高い商品」は、あり得る ものの、実際の市場ではほとんど存在しないと述べています。
つまり、理論上はニッチなターゲットに刺さって、鬼のようにリピートされる商品は理論上はあり得るけど、実例はほとんど存在しないって話です。
さらに、彼は「市場浸透率が高いブランドほど、自然と消費者の購入頻度も高くなる」ことを指摘しています。
また、逆も然りで、「市場浸透率が低いブランドほど、購入頻度も低くなりやすい」という現象が繰り返し見られると述べています。
- 市場浸透率とは
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「特定の期間内にブランドを購入した消費者の数 ÷ 購入可能な全消費者の数」 で計算され、ブランドが市場にどれだけ浸透しているかを示す指標です。
そして、市場浸透率が低く、なおかつ購買頻度も低い現象を Double Jeopardy(二重のリスク) と彼は呼んでます。
何が言いたいかと言うと、台湾に進出するなら、初めから市場にどのように浸透させ、ターゲットをどのように広げるか考える必要があるということです。
台湾市場でのマーケティング戦略

ここからが本題です。
台湾市場に参入する際、「まずは小さくビジネスを展開する」 という考え方は一見合理的に思えます。
興味深いのは、これまで受けてきたご相談の中で、
「まずはスモールスタートで、うまくいったら予算を拡大します!」と言って、本当に予算を拡大した会社は、僕らが今までお手伝いおそらく50社以上の中で1社だけだったということです。
マジです☺️
ちなみに、その唯一の会社はアダルト系のサービスでした😅
ただ、バイロン・シャープ氏の話を聞くと納得です。
なぜなら市場浸透率が低いと、自然と購入頻度も低くなり、結果的に売上が伸び悩む可能性が高くなりますからね。
別に僕は、最初からガンガン広告予算を出せと言いたいわけではありません。
ただ、「市場にどう浸透させるか」という視点は持っておいてほしいということなんです。
それはどういうことか?
その価格では台湾市場には浸透しない…
最近の円安の影響もあってか、日本の商品が台湾で販売される際に 日本の1.5倍の価格 になるケースが少なくありません。
年間 500~600万人 の台湾人が日本を訪れる中で、そのような価格設定の商品を台湾市場で売るのは至難の業です。
特にここで重要になる概念が 価格弾力性 です。
- 価格弾力性とは?
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- 価格弾力性とは、価格が変動したときに需要がどれだけ変動するかを示す指標です。
- 例えば、価格弾力性が1の商品 があれば、価格が10%上がると 需要は10%減少します。 つまり、価格弾力性が高い商品ほど、消費者は価格に敏感 ということになります。
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一般的に 代替可能な商品は価格弾力性が高いと言われています。
一般的に、代替品が多い商品は価格弾力性が高いと言われています。
自社商品の価格弾力性がどの程度か、ぜひ ChatGPT で調べてみてください。
何が言いたいかというと、価格弾力性が高いカテゴリの商品を、2025年3月時点の台湾市場で売るのは、かなり難易度が高いということです。
グローバル企業のプライシング努力

現在何かと値上げブームですが、台湾にいて感じるのはグローバル企業のプライシングの技術です。
価格を下げて利益を出すのは 単なる値下げではなく、技術やノウハウが必要な戦略 です。
この点について、Byron Sharp 氏 も『ブランディングの科学 誰も知らないマーケティングの法則11』の中で言及しています。
例えば、みなさんは台湾の Nike の店舗 に行ったことはありますか?
そこで靴を見て、日本と価格があまり変わらないと感じたことはないでしょうか?
Apple も台湾と日本でそこまで値段が変わりません。Apple や Nike もアメリカのブランドですが、アメリカへ行って値段を見てもものすごく極端に値段に差があるようには思いません(Nike や Calvin Klein などのアメリカブランドはアメリカ本土では度々セールになっていて安くは感じますが…)
僕がこのブログで伝えたいのは、単に 「値下げをすべき!」 ということではありません。
適切な価格設定をしなければ、市場浸透率は上がらず、成長もしない ということです。
すき家やサイゼリヤが台湾で適切な価格で商品を提供しているのは本当にすごいと思っています
バイロン・シャープ氏は著書の中で、コカ・コーラの売上の大半はライトユーザー(年間購入本数が0〜3本)によるもの だと指摘しています。
要するに、台湾で成功をするなら、日本でハイブランドでもない限り、高い価格のまま or 高すぎる商品だと一部の消費者にしか刺さらないし、それだと市場に浸透しないため購入頻度も上がらずジリ貧になるって話です。
最近台湾でうまくいっている企業事例1:現地製造
最後に、台湾市場で成功している日系企業の事例 についてお話しします。
すでに表題でも触れていますが、僕のクライアントや周囲で成功している日系企業の共通点は、台湾現地で製造を行っている ことです。
現地生産により コストを抑えることができ、市場浸透率を高められる というメリットがあります。
しかし、現地での製造には 品質の課題 もあります。
実際、台湾で製造している企業の総経理(リーダー)に話を聞くと、 日本よりも品質が若干劣ることには、ある程度妥協している とのことでした。
これは仕方のないことであり、受け入れざるを得ない現実です。
最近台湾でうまくいっている企業事例2:圧倒的ブランド力
台湾で製造せず、日本や他国で製造した商品をそのまま台湾で販売して成功している日系企業も存在します。
その条件としては、ブランド力が挙げられます。
例えば、ユニクロ は、価格弾力性が高い(価格に敏感な)アパレル商品を 日本よりも高い価格 で販売していますが、それでも台湾できちんと展開できています。
僕は内部の人間じゃないのにで、もしかしたら KPI 等は未達かもしれませんし、なんなら利益を出していない可能性もありますが、彼らが台湾で10年以上商売をしていることは事実です。
市場浸透のための価格戦略と長期的視点
繰り返しになりますが、僕は「商品を安くして利益率を下げろ」と言いたいわけではありません。
ただし、日本では 「大衆向けの商品」 として販売しているものが、台湾では 「ハイブランド価格」 になってしまうケースが多く、
このような状況では 市場に浸透しにくく、購買頻度も上がらず、成長が難しくなる ってことを言いたいのです。
なので一旦コストとかリスクとか抜きにして台湾市場を攻めるなら、2025年3月現在個人的には以下のやり方がいいのかなーと思っています:
✅ OEM(現地製造)などを視野に入れ、適切な価格設定を検討する
✅ 日本と同じパフォーマンスを発揮できる価格帯を模索する
✅ 長期的な視点で、広告やコンテンツを通じてブランド価値を伝え続ける
これらを最初から意識せず、結果的に 3年ぐらいで台湾から撤退してしまう日系企業は本当にもったいない と思います。
以上、applemint 代表佐藤からでした!
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