中小企業の社員をAI変革に巻き込むには?applemintの失敗と成功

中小企業の社員をAI変革に巻き込むには?applemintの失敗と成功

こんにちは。applemintのEricです。

ネット上にはAI変革を論じた記事が数多くありますが、その多くは「成功事例」に焦点を当てています。実際には、記事にあるほど順調に進まず、いくつもの壁にぶつかる会社のほうが多いはずです。

この差は台湾に限った話ではありません。ナレッジワーカー2,500人を対象にした調査では、65%がAIのなかった働き方を懐かしいと感じています(Adaptavist、2026)。「なぜ進まないのか」「なぜ社員がAIを使いたがらないのか」は、中間管理職や経営者にとって頭の痛い問題です。

以前の記事中小企業のAI導入はどう進める?AI First Policyの3つの実践では、AI導入の要件そのものを扱いました。今回は「どうすれば社員がAI変革に前向きになるのか」に絞ります。AI First Policyで触れた考え方を引き継ぎながら、applemint自身がどこで転んだのかをお伝えします。これから検討する中小企業の方が同じ穴を避けられるように、失敗もそのまま書きます。

Ericの視点

社員をAI変革に巻き込む鍵は、要求ではありません。経営者が先に納得できる結果を出し、成功の定義を「時間の削減」から「価値の創出」に置き換えることです。applemintは週1回の成果発表を17週続け、第2ラウンドの後半で終了しました。生まれたSkillは発表者本人しか使わず、他のクライアントには再利用しにくく、「期待する成果物」も最初から定義されていなかったからです。AI導入は特定の個人やチームには任せられないこと、経営側が社員より先に期待値を明確にすべきこと。それがこの実験の結論です。

なぜ社員はAIの活用に協力してくれないのか?

員工不清楚為什麼要在工作中使用 AI 的示意圖

多くの社員は協力したくないのではなく、どこから手をつければいいのか分からないだけです。先ほどの2,500人調査でも、36%が「なぜ仕事でAIを使うのか」を自分でも分かっていないと答えています(Adaptavist、2026)。もう1つよくあるのは、経営層自身がAIを理解しないまま、現場に協力を求めてしまうケースです。

具体策に入る前に、前提を1つはっきりさせておきます。資本主義の現実のもとでは、AI導入において会社の利益と社員の利益は一致しません。ここで、アジアの企業にありがちな「君のためを思って言っている」という家父長的な物言いで社員を動かそうとする経営者がいますが、2026年にこの伝え方は通用しません。社員とどう対話するかは以前の記事中小企業のAI導入はどう進める?で扱ったので、ここでは繰り返さず、「ではどうするか」の先を書きます。

経営者は先に納得できる結果を出せるか?

経営層がまず自分で一度やり切り、その結果を社員に開いて見せることです。AI導入の場面では、「同業他社が何をしているか」を見て、そのまま「うちもやろう」と現場に求めてしまう経営層が少なくありません。

運よく社員がAIツールの天才ならそれでも回るかもしれません。ただ、たいていの人は私やあなたと同じで、AI時代の可能性を手探りで探している同行者です。

applemintのAI First Policyの実践では、第1段階として「デジタルマーケティング会社はAI Firstポリシーをどう導入したか (中国語)」で扱った「レポート作成」の工程を優先しました。

現場のレポート担当者からは「完成までの総時間は以前と変わらない」というフィードバックがありました。ただ同時に、「AIがデータを整理してくれるぶん、より深い問いを考える時間が増えた」とも言っています。

この最初の一歩を管理側が踏めるかどうかが、社員がついてくるかどうかの最大の分かれ目だと考えています。

なぜ「削減できた時間」を成果指標にすべきでないのか?

total time 1

答えはシンプルで、多くの場合は減らないからです。

同じ2,500人の調査では、42%がAIの出力を検証する時間のほうが、AIで削減できた時間より長いと答えています(Adaptavist、2026)。これは社内の実感とも一致します。導入してみると、仕事を終えるまでの総時間は変わらず、社員の作業が「実行」から「チェックと品質管理」に移るだけなのです。

企業経営の中心はコスト削減と利益創出にあり、多くの会社はAI変革をコスト削減の一環として捉えます。そのため経営者の期待も、自然と「AIでどれだけ時間とコストを減らせるか」に向かいます。

しかし「コスト削減」の発想よりも、AI変革への期待は「価値を生み出すこと」に置くべきです。

広告レポートで言えば、チェックの時間は増えました。その一方で、AI導入後は事前に行えるクロス分析の幅が広がり、社員がより踏み込んだ仮説を出せるようになっています。

クリエイティブ制作でも同じです。後工程の微調整には時間がかかるようになりましたが、AIでたたき台を作ることで、方向性を検証する段階でクライアントに企画の輪郭を伝えやすくなりました。

社員が毎週AI活用を発表する取り組みを、なぜ17週でやめたのか?

この取り組みは17週続けたところで終了しました。結果は期待どおりにはならず、問題は「継続性がない」「再現性が乏しい」「期待値の設定が曖昧」の3点に集中していました。これは、AI変革が「社員にAIを使わせる」だけで完結するものではないことの裏返しでもあります。

ここからは、実験の経緯と、最終的に終了を決めた理由を掘り下げます。

この取り組みを実際にどう進めたのか?

applemint 每週五上午同仁分享 AI 應用成果的情境

前述した2つの「協力してもらえない状況」を解くために、成果発表という形を採りました。メンバーに「AIで1つの課題を解き、目に見える結果を出す」経験をしてもらい、AIを使うことへの手応えをつくる狙いです。

毎週金曜の午前を研修時間に充て、メンバーがClaudeやAIで解決した課題を発表しました。これまでに17のテーマが積み上がり、競合分析、動画企画、ブログ企画、Claude Design、GA4 MCP Serverの導入手順 (中国語)をはじめとする各種MCP Serverの活用などをカバーしています。

この17週のうち、第1ラウンドは各自が自由にテーマを選び、第2ラウンドは会社側がテーマを指定しました。

得られた成果

まずこの実験で確かめられたのは、「AI導入は特定の個人やチームには任せられない」ということでした。

2つのラウンドを通して、メンバーごとに問題の捉え方も解き方も同じではないことが見えてきました。発表へのフィードバックを通じて、業務フローの組み立て方をお互いに交換する場にもなりました。

この17週の共有を通じて、私は毎回作られたツールを社内Pluginに統合し、Claude Teamへ配備して、全員が同じリリース版を使える状態にしました。そのうえで、メンバーが書いたSkillの意味づけと構造を最適化しています。

さらに第2ラウンドでは評価の仕組みを加え、テーマの解釈、活用の深さ、ビジネスインパクト、再現可能性といった観点からメンバーのAI活用力を見るようにしました。これは人事評価や育成面談の場でも、客観的な指標として役立っています。

改善すべきだった点

成果發表產出的 Skill 只有分享者自己使用的示意圖

先ほど触れたとおり、この実験は第2ラウンドの後半で終了しました。ここでは3つの原因をもう少し具体的に書きます。

  • 継続性がない:毎回の成果発表でSkillやプロトタイプは生まれていましたが、追跡してみると、そのSkillを使っているのは発表者本人だけで、その後メンテナンスする人もいませんでした。
  • 再現性が乏しい:前の点の延長で、各発表者は自分の担当クライアントを起点にSkillを設計するため、ほかのクライアントの事情まで考慮しきれません。結果として他のメンバーには「使いにくい」ものになり、使われなくなりました。
  • 期待値の設定が曖昧:第2ラウンドではテーマを指定しましたが、テーマによっては「期待する成果物」が曖昧でした。たとえば「AIで請求書の作成を自動化したい」は一見具体的ですが、「どうなったら検収完了なのか」「今後やり方を統一するのか」といった到達点が設定されていませんでした。最終的に「(誰も使わない) Skillの発表会」になってしまったのです。

これらの問題は互いに絡み合っています。期待値が曖昧だから、発表時に「他のクライアントではどんな状況が起きるか」まで考えが及ばず、発表が終わればそのSkillを使い続ける人が現れない。これはメンバーの努力不足ではなく、AI変革を考える経営側が、社員より先に期待する成果を明確にしておくべきだった、という話です。

よくある質問

社員が「AIを使うとかえって時間がかかる」と言うのは言い訳ですか?

言い訳ではなく、広く起きている現象です。先ほどの2,500人調査でも42%がAIの出力を検証する時間のほうが長いと答えていますし、弊社の広告レポートの工程でも同じことが起きました。否定するより、計算できる問題に変えるほうが早いです。
その作業は年に何回あるのか、1回あたりどれだけ短縮できるのか、そのためにどれだけの時間を投じる価値があるのか。〈中小企業のAI導入はどう進める?〉に、投じる価値があるかを判断する表を載せているので、そのまま使えます。

成果発表という形式自体が間違いだったのでしょうか?

形式は有効です。ただ、発表だけで終わらせてはいけません。第1ラウンドの自由テーマの段階には確かに価値があり、メンバーはお互いの解き方を見られましたし、私も活用力を観察する具体的な材料を得られました。
問題は、発表が終わればそこで終わり、引き継ぐ人もいなければ、何をもって完成とするかの定義もなかったことです。もう一度やるなら、検収基準とメンテナンス担当をテーマの中に書き込みます。発表の後で考えることではありません。

AI導入は専任者やAI専門チームに任せるべきですか?

弊社の実験結果では、任せられません。17週を通じていちばんはっきりしたのは、メンバーごとに問題の捉え方も解き方も違うということです。この違いは、1人や1チームが代わりに想像できるものではありませんでした。統合と配備は専任者が担えますが、活用シーンそのものは現場から出てくる必要があります。

作ったツールが誰にも使われない場合はどうすればいいですか?

3つの点から逆算してください。発表前に「どうなったら検収完了か」を定義すること、発表後のメンテナンス担当を決めること、設計時に2つ以上のクライアントの状況を想定するよう求めることです。弊社の17週に欠けていたのはまさにこの3点で、その結果、生まれたSkillは発表者本人しか使わないものになりました。

まとめ:社員を巻き込むには、経営者が先に完成図を描く

この実験を経て、持ち回りの成果発表という形式は終了し、毎週の研修時間は私からの情報・ナレッジ共有を中心とする形に組み替えました。ただこの過程を通じて、中小企業がAIを導入し変革を進めるうえでの具体的な痛点は、以前よりはっきりと捉えられるようになりました。

自社にどうAIを導入し、どう変革を進めるか模索している段階かもしれません。その場合はまず、チームと一緒に「AIを導入したあと、自分たちの会社はどうなっているのか」の全体像を考えてみてください。そのうえで、全社を挙げて取り組んだapplemintでさえ落ちた穴を避けていく順番になります。

遠回りを減らしたい場合は、問い合わせページまでお気軽にご連絡ください。AI変革のお手伝いをします。中小企業が「オンプレミスでAIを構築する」と大きく構えるのが難しいことは承知しています。業務フローの棚卸しとデータ管理の整理から、より低コストな導入の道筋を一緒に検討します。

applemintへのご相談やご連絡はこちらから!

Eric Chuang

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